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日々新しい作品が次々生まれるミステリー小説。刑事ものや日常の謎を描いた作品、切羽詰まったスリリングな描写が終始描かれているものや、シャーロック・ホームズや明智小五郎に代表される探偵が、事件を華麗に解決する探偵小説など、一口にミステリー小説と言っても、種類は様々です。

数ある種類の中でも、サイコミステリーというものがあります。主に2種類のミステリー小説のことを指しており、1つ目は異常心理、所謂サイコパスなどに分類される人物の犯罪を描いたミステリー小説。

もう一つは心理学的、精神医学、プロファイリングに分類されるような手法で、殺人現場に残された資料や証拠から犯人の人物像を推定して、そこから逮捕に追い込んでいくミステリー小説、この2つの意味が、サイコミステリー小説とされています。

サイコミステリーは昔からありますが、近年の思想や精神障害などの、様々な項目に対する人々への理解や自由化が進むにつれて、熱も加速しています。サイコミステリーでなく、サイコホラー小説とも呼ばれることも多いです。

そんな数あるサイコミステリー小説の中から個人的に選んだおすすめ小説を、2作紹介します。

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日本が舞台のサイコミステリー小説、八つ墓村のあらすじ

サイコミステリーと言われれば、首を傾げる方もおられると思われますが、横溝正史の代表作にして日本ミステリーの代表作、八つ墓村もサイコミステリーの1つです。日本で最も知られている探偵の一人、金田一耕助が出てくるシリーズ物の長編4作目の小説です。

舞台は中世の日本、村人に襲われ虐殺、「祟ってやる」と言葉を残して絶命した落ち武者8人の言う通り、彼等の虐殺に関わった村の者が落雷で死んだり、狂死をしたので、村人は怖くなり8人分の供養墓をつくり、それが「八つ墓村」という名前になった。

時は昭和まで流れ、八つ墓村は金持ち一家が支配する村になっており、その当主は妻帯していながら村にいた美少女に惚れ、強引に愛人にした。愛人は子を宿すが、その子は当主でなく、前の恋人の子でないかと村に噂が流れ、当主の怒りを恐れた女は男児を連れて村の外に逃げ出すことに成功した。

当主はそれに怒り狂い、猟銃と日本刀を持ち出し、村中の人間を殺戮して周り山奥へ足を向けたまま消息が途絶えた。その後、太平洋戦争が終わり、当主が病気で後継者が不足し、後継の権利があると、東京で会社員をしていた愛人の男児に、八つ墓村から訪問者が来る。

だが、時の当主に殺された村人の遺族たちは、八つ墓村に彼が来ると憎悪の目を向ける。そのような中で連続殺人事件が起き、東京から警察の捜査の協力者として、探偵・金田一耕助が八つ墓村にやって来て、事件は展開する。

八つ墓村のサイコミステリー要素とは?

あらすじを見ると、場面が二転三転して分かりにくいかもしれませんが、これでも纏めた方で、原作、特に小説はこれ以上にややこしいようです。金田一シリーズもそうですが、横溝正史の作品には寝取りやら愛人、惨殺や実は兄弟・親子であったというような、要素が沢山登場します。

八つ墓村におけるサイコミステリーの要素ですが、昭和の当主が自分の思い通りにならないと権力を振りかざしてそれを捻じ曲げる、身勝手な暴君的性格という精神的欠陥と、加えて村人32人を惨殺して周ったという、異常行為を行っていた点、探偵・金田一耕助が殺人現場の遺留品などから、犯人への糸口を探るところだと思われます。

大石圭のサイコミステリー小説、『殺人勤務医』とは!?

続いてのサイコミステリー小説は、大石圭の『殺人勤務医』です。角川ホラー文庫から刊行されており、題名だけでもなんとなくどんな話か想像はつくと思われます。

古河という、堕胎が専門の産婦人科医が主人公です。彼は整った容姿と物腰の柔らかさから、周囲からは人格者として慕われています。しかし、彼自身が死に値すると判断した人を地下室に監禁、拷問の末に殺害するという、惨たらしい裏の顔がありました。

産婦人科医、堕胎専門として産まれてくる前の命を1000人以上処分してきたとはいえ、殺人を犯すことに古河は少しも躊躇していません。その古河がある日見つけた、理想的な獲物となる女性を、地下室に招こうと準備を始めるが…。

言わずもがな、産婦人科医でありながら勝手に人に死に値するというレッテルを貼り、自ら拉致監禁し、殺害するという異常者、サイコパスめいた主人公が登場するという点が、サイコミステリーに繋がります。

殺人者でありながら堕胎、命を司る産婦人科医と言う、皮肉にも繋がりのある古河の日常を淡々と描き、グロテスクな内容ながら作品にのめり込み、古河にも入り込んでしまうという、リアルな人間の殺人鬼を描いた作品です。

まとめ 

横溝正史の八つ墓村、大石圭の殺人勤務医を紹介しました。ここで、今回書いてきたことをまとめます。

①日本を代表するミステリー、八つ墓村は探偵・金田一耕助が登場するミステリー小説。

②横溝正史の八つ墓村は、村人の武将への惨殺、当主の村人惨殺などのサイコミステリー要素がある小説

③大石圭の『殺人勤務医』は、堕胎専門の産婦人科医の殺人鬼の裏の顔を描いた、サイコミステリー小説。

昭和のサイコミステリー、平成のサイコミステリーも、精神的な異常行動者が登場し、物語を不気味にして読者を惹きこませていく点は同じと言えます。時代や設定は違えど、サイコミステリーは古くからあり、読者を楽しませていたことは同じのようです。

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