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ミステリー小説には、ストーリー後半や終盤に明かされる秘められた真実や、読者がビックリ仰天する、衝撃のラストが語られるのが多いです。寧ろそれこそがミステリーの醍醐味で、読者が待ち望んだ展開である、とも言えるでしょう。

特に読者が想像していた結末や犯人が、ラスト1ページで衝撃の真実が明かされて驚き、事の真相を確かめるためにもう一度最初のページから読む、という行為が必要になる作品などは、後に衝撃のラストを飾る、有名作品として語り継がれることが多いです。

では、そんな衝撃のラストが待っているミステリー作品の『アクロイド殺し』と、『十角館の殺人』の詳細を解説していきたいと思います。

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アガサ・クリスティーの『アクロイド殺し』!

『そして誰もいなくなった』、『オリエント急行殺人事件』など、様々な新たなミステリーをこの世に生み出してきた、謂わずと知れたミステリーの女王・アガサ・クリスティー。ラストに明かされる真実や結末に、読者が驚くことが多いです。

アガサの有名な著作の中でも、今回紹介する『アクロイド殺し』は、衝撃のラストを迎えることで有名な作品です。

ジェームス・シェパード医師が深夜に電話を受けて駆け付けると、そこには村の名士アクロイドの死体があった。彼の甥が容疑者とされたが、行方をくらませ事件はあわや迷宮入りかと思われたが、村に越してきていた名探偵ポアロが事件の捜査に加わることにより、新たな展開を迎える、というあらすじです。

『オリエント急行殺人事件』では、容疑者が一致団結し被害者を殺した、という読者の考えの欠点を見抜いた衝撃の事実が明かされましたが、この『アクロイド殺し』でも、読者の期待を良い意味で裏切る結果が待ち受けています。

『アクロイド殺し』、ラストに起きる衝撃の展開とは!?

『アクロイド殺し』は、アガサ・クリスティーが生み出した名探偵、エルキュール・ポアロが登場し、次々に謎解きをする長編小説です。

ストーリーは単純明快で、村で殺人事件が起きて名探偵ポアロが謎を解いていく中、登場人物が次々に容疑者として浮かび上がり、最後には解いた謎の全ての答えが繋がり、ひとりの真犯人を導き出す、というものです。

この『アクロイド殺し』では、語り手は本作のワトソン役でもあるシェパード医師であり、彼こそが殺人事件の犯人だということが、ラストで分かる衝撃の事実なのです。語り手が犯人ということは別段珍しくないですが、本作は手記で構成されていることにより、それが分かりづらくなっています。

この手記は、後にポアロや誰かの目に触れる可能性があったため、医師による殺人だと分からないよう、巧妙な描写方法で犯行に関する記述をはぐらかしています。よって読者は彼が犯人だと気付きにくく、ポアロにより語り手の彼が犯人だと衝撃のラストを持って知る、という構図が出来上がっています。

これぞ衝撃のラスト!綾辻行人『十角館の殺人』

綾辻行人のデビュー作にして、今なお色あせない名作、『十角館の殺人』新装改訂版は、ミステリーに名高い、衝撃のラストで読者を仰天させる作品です。

十角形が特徴の奇妙な館がそびえ立つ孤島、角島を大学ミステリ研究会の7人が訪れた。この館を建てた建築家の中村青司は、島にある半年前に炎上した青屋敷で焼死したそうだ。やがてこの十角館で、学生たちを次々と襲う連続殺人が巻き起こる。

ミステリ研究会の面々は、互いをミステリー作家になぞらえてエラリイ、カー、ポウ、ルルウ、アガサ、オルツィ、ヴァンと呼び合っていました。角島だけでなく、本土に残ったメンバーにも、死者から謎の手紙が届くという奇妙な出来事が起き、江南、島田、守須恭一の3人で青屋敷の事件を調べ始めます。

本作は、島と本土の其々で事件を引き起こした犯人を捜す、孤島が舞台で外部と孤立したクローズド・サークルも用いたミステリー小説です。

クローズド・サークルと言われると、登場人物の呼び名にもなぞらえている、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』を連想する人もいると思われます。この作品も孤島が舞台になっており、外部と遮断された中で犯人に襲われる様を描く、「孤島もの」の代表的な作品です。

『十角館の殺人』の犯人が分かる衝撃のラスト一行とは!?

ここから先がネタバレになりますが、本土と角島、両方の場所で起きた全ての殺人事件の犯人は、ミステリ研究会のヴァンです。ヴァンは守須であり、島と本土を行き来し、殺人を繰り返していたのです。

ストーリーの構成や読者の中にいる、ミステリーファンの考察も踏まえ、犯人はエラリィであり、彼が全員殺害して自らも自殺したのかと思いきや、ラストの一行で守須にも呼び名があり、それが館にいるはずのヴァンだと分かるのです。ここで読者はヴァン、守須こそが一連の事件の犯人だと気付く、まさに衝撃のラストになるわけです。

誰しもが、クローズド・サークルを用いている以上、孤島にいる7人の内の1人と同じ人物が本土にいる訳がない、という思い込みをすることを見越した上、それを利用したのです。また、守須と言う名前からして、ミステリーファンなら誰しもが、モーリス・ルブランを連想してしまいがちです。

したがって本作は、ミステリー好きの読者の思考を巧みに操り罠に引っ掛けて、最後のラスト一行でそうだったのか!という衝撃の展開を披露したのです。

かくいう私も、守須ならモーリスだし、外部から遮断されてるなら本土との行き来は当然無理だよなぁ、とミステリファンぶって考えており、ラスト一行でまんまとビックリ仰天させられた1人です。

まとめ 

ミステリーファンなら誰もが予想する展開を、衝撃のラストを用いて終幕させる2作品について解説しました。それをまとめます。

①アガサ・クリスティーの『アクロイド殺し』は、ジェームズ医師がアクロイドの死体を見つけたところから始まる。

②実は語り手が犯人だったという、衝撃のラストを『アクロイド殺し』は迎える。

③綾辻行人の『十角館の殺人』は、孤島と本土を舞台にしたクローズド・サークルのミステリー小説。

④本土と館、両方の行き来が可能だったという、読者の思い込みを利用した巧みなトリックがラスト一行で明かされる。

この記事では2作しか紹介出来ませんでしたが、ミステリーには衝撃のラストで読者を裏切る作品が沢山あります。アガサの著作にも多いですし、日本ミステリーにもあります。

読者としては予想を裏切られるのは悔しいですが、それ以上に凄いなぁと思って作者を尊敬してしまいますし、犯人が分かったという達成感もあります。今回紹介した2作は、有名な作品であり、それもあって手に取りやすいと思われます。興味がある方は、読んでみて、びっくりさせられるのもおつな物かもしれません。

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