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作家の有栖川有栖は、作家生活30周年を迎えた、本格ミステリー小説界の重鎮です。1989年の本格的作家デビューから現在まで、何十作もの推理小説をこの世に出してきました。中でも「学生アリスシリーズ」「作家アリスシリーズ」の2大シリーズは人気で、ファンも多くいます。

「学生アリスシリーズ」は、英都大学の「英都大学推理小説研究会(EMC)」の部長、江神二郎を探偵役に据え、作中の学生時代の有栖川有栖が助手役として登場し、繰り広げられる、ミステリーシリーズです。

「作家アリスシリーズ」は英都大学社会学部助教授・火村英生が探偵役となり、ワトソン役は推理作家の有栖川有栖です。学生の有栖川有栖が登場するのが学生アリスシリーズ、社会人の推理作家になった有栖川有栖が登場するのが作家アリスシリーズです。

他にも有栖川有栖の作品には、17歳の少女・空閑純が探偵役となる『ソラシリーズ』あり、3作の長編が発売されています。

今回は有栖川有栖の2大人気シリーズの作家アリスシリーズ、学生アリスシリーズを紹介していきたいと思います。

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作家アリスシリーズの概要と、登場人物!

作家アリスシリーズは、1992年に発売された長編小説、『46番目の密室』から始まった人気シリーズです。46番目の密室では、最初の作品ということで、火村英生と有栖川有栖の出会い等も作中に取り入れられました。最新作は長編の『インド倶楽部の謎』です。

探偵役である火村とワトソン役の有栖川有栖が主な登場人物で、多くの作品はアリスの一人称の一人語りで繰り広げられます。大阪、兵庫、京都などの各府警本部の警部や刑事もレギュラーチームとして登場し、細かな人物設定がなされています。

火村やアリスにも細かな人物設定がされています。火村は容姿の整った女嫌いで、犯罪社会学を専攻し、学者を志した理由を「人を殺したいと思ったことがあるから」とし、暗い過去をちらつかせる描写が多々ありながらも、アリスにさえ真実を話そうとしない部分があります。

対してアリスは、そんな火村を救いたいと思う良き理解者なワトソン役です。一般的な価値観と思考を持った大人しい青年として描かれていますが、高校時代に片思いし、ラブレターを渡した女子生徒が、その日の夜に自殺未遂を起こすという事態が起こり、今でもトラウマになっているという、くすぶりがあります。

作家アリスシリーズでも人気の「国名シリーズ」の面白さ!

作家アリスシリーズでも、エラリー・クイーンの「国名シリーズ」を模した、有栖川有栖版「国名シリーズ」があります。本家の方で使われていない国名をタイトルに据え、また短編中心だった本家の方とは異なり、短編、長編共に発売されているのが特徴です。

国名シリーズは、昨年までに9作発売されています。第1作目の『ロシア紅茶の謎』から、『スウェーデン館』、『ブラジル蝶』、『英国庭園』、『ペルシャ猫』、『マレー鉄道』、『スイス時計』、『モロッコ水晶』そして最新作の『インド倶楽部の謎』と続いていきます。

国名シリーズは、『スウェーデン館の謎』と『マレー鉄道の謎』、『インド倶楽部の謎』の3作が長編で、あとの6作が短編小説になっています。長編はミステリー初心者でも、飽きることなく一気に読める面白さがあります。

短編小説6作でも、短編なだけあり様々な事件と火村とアリスの掛け合いを楽しめるのが魅力で、個人的には『ロシア紅茶の謎』の中の『屋根裏の散歩者』が好きなのですが、そこで犯人が分かるのか!としっくりする点や、江戸川乱歩の短編を彷彿とさせるところもあるので、初心者だけでなく、ミステリーファンにも楽しめる作品になっています。

有栖川有栖の人気シリーズ、学生アリスシリーズ!

もう一方の学生アリスシリーズは、「英都大学推理小説研究会」に所属している学生の有栖川有栖をワトソン役兼語り手に、部長の江神二郎が探偵役をし、他の3人の部員と共に直面する謎を解いていく、と言うストーリーです。

長編4作、短編1作が発売されていますが、有栖川先生曰く、「長編5作、短編2作で終了する予定」だそうです。長編は、いずれも部員たちが旅行先などで自然災害に見舞われて孤立するという脱出不可能の中で、殺人事件に遭遇するという本格推理小説における、クローズド・サークルを用いています。

対して短編は長編の番外と言う立ち位置なのか、日常の謎がモチーフです。本格推理小説ですが、部員たちの将来への不安や恋愛を描いた、青春群像ミステリー小説としても知られています。

学生アリスシリーズの人気作、『女王国の城』とは!

第1作は有栖川有栖デビュー作の『月光ゲーム―Yの悲劇'88』で、クローズド・サークルとダイイングメッセージという、王道本格ミステリーの要素をこれでもかと詰め込んだ、ミステリー好きならワクワクしてしまう小説です。

学生アリスシリーズの中でも特に人気が高いのが、上下巻編成の長編小説、『女王国の城』です。大学に姿を見せなくなった江神を追ったアリスが追いついたのは、宗教団体の聖域。そこで予期せぬ殺人事件が起こるのです。しかし警察が介入できないので自分たちで推理しかないという設定で、江神の推理が繰り広げられます。

長編は4作なので、次回で本編は終わるということですが、ファンとしては早く読みたいものの、読んだら終わりという切なさがある本シリーズです。

まとめ 

作家・有栖川有栖のシリーズ2つについてご紹介しました。どちらも本格推理小説の面白さが詰まった作品なので、両者共に違った面白さがあります。ここで書いてきたことをまとめましょう。

①作家アリスシリーズは、火村とアリス、各府警本部の登場人物が織りなすストーリーになっている。

②国名シリーズは、・エラリー・クイーンの本家版と異なり、短編と長編で構成されている。

③学生アリスシリーズは、本格ミステリーでなく、青春群像ミステリーとしても認知されている。

④人気の『女王国の城』は、上下編成ながら、本格ミステリー要素がバリバリ入った面白さがある。

作家アリスシリーズは登場人物に細かい設定があるので、そこを頭において読んでも楽しめます。学生アリスシリーズも長編などで本格推理小説として評価された、根強い人気があります。

どちらの探偵役や周囲の人達ともに味のある作品ですので、片方は勿論、両方読んでも面白いこと間違いなしですよ!

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