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皆さんは、有栖川有栖というミステリー作家をご存知でしょうか。『女王国の城』『月光ゲーム』等で数々の推理賞を受賞し、本格ミステリベスト10等のランキングでも、幾つもの著書が入っている人気本格ミステリー作家です。

1984年のデビュー作「やけた線路の上の死体」から現在まで、数々の名作を世に出してきました。そして昨年2018年9月、講談社ノベルスより最新作となる、「インド倶楽部の謎」が発売されました。

この『インド倶楽部の謎』は、エラリー・クイーンの「国名シリーズ」を模した、有栖川有栖版の国名シリーズで、2016年にドラマ化もされた「臨床犯罪学者 火村英生の推理」の探偵役日村英生とその助手・有栖川有栖が活躍する「作家アリスシリーズ」の最新作になります。

今回この記事では、有栖川有栖の最新作『インド倶楽部の謎』のストーリーのあらまし、そそしてネタバレと感想を公開していきます!

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「インド倶楽部の謎」に属される「作家アリスシリーズ」の主な登場人物!

有栖川有栖最新作『インド倶楽部の謎』は、有栖川有栖が作中で作家兼助手として活躍する、「作家アリスシリーズ」の3年振りの新規描き下ろしの最新作になっています。この「作家アリスシリーズ」は、1992年に発売された「46番目の密室」から27年も続いている大人気シリーズです。

「作家アリスシリーズ」は、「火村英生シリーズ」「作家編」等とも呼ばれもう1つのシリーズ「学生アリスシリーズ」と区別するために呼称されています。『インド倶楽部の謎』のような国名がタイトルに入っている作品たちは「国名シリーズ」と呼ばれています。

この「作家アリスシリーズ」は、シリーズ通しての探偵役・火村英生とワトソン役の推理作家、有栖川有栖が主な登場人物で、作品の多くは作中の有栖川有栖通称アリスの1人称による語りで展開されていきます。

『インド倶楽部の謎』の簡単なあらすじ

『インド倶楽部の謎』のあらすじとしては、前世から死ぬ日に至るまで、全ての運命が予言され記されているという「アガスティアの葉」。その葉を一目見ようと、神戸異人館街の外れのとある屋敷には「インド倶楽部」メンバー7人が集まっていた。

しかしこの数日後、巷では変死体が揚がるという殺人事件が相次いでいた。まさかアガスティアの葉でこの一連の事件は予言されていたのか?捜査を始めた火村英生と有栖川有栖は、謎に包まれたこの会と、連続殺人事件との関係に迫っていくことに――!?

本作は「前世の存在」を信じ切っているという、とてつもなく怪しい人たちの例会から始まります。このような、オカルトとは無縁の存在にある火村とアリスですが、他の作品と同じく、実は裏で例会に関連していた殺人事件が起こり、2人が登場して事件が動きます。

『インド倶楽部の謎』の、重要キャラクターとの関係性とは!?

トリックに重心が置かれることが多々の本格ミステリーですが、今回の謎を解くカギは「動機」です。実はこのインド倶楽部の会は、坊津理穂帆子という登場人物が、皆に共同幻想として前世を信じ込ませ、思い通りに人を操って支配下に置こうとする為のものでした。

そして、彼女の幻想に取り込まれた人が犯行に及び、その犯行により坊津理穂帆子も殺されてしまいます。彼女の悪趣味な嗜好により、自分自身の命を落とすことになったのです。そしてこの例会の7人、「前世で同じ時を生きた」という共同幻想で結ばれていました。

坊津理穂帆子は私立探偵でしたが、非常に上手いストーリーテラーだったようで、彼女の共同幻想で犯行に及んだという動機からみても、恐ろしい女性なのは間違いありません。自分の施した共同幻想で殺される、と言う皮肉な結果で終わって良かったかもしれませんね。

『インド倶楽部の謎』読後の感想!

読後の感想としては、諸悪の根源が殺されるという、しっくりこないわだかまりが残る居心地の悪い感じが残ります。「前世」という荒唐無稽なワードが絡みついていますが、2人が真犯人に辿り着くまでの経路や、何処か余韻の残る終わり方で締め括られているところなど、有栖川作品らしさが随所に見られます。

また、本作は始めから2人が揃って捜査するところも、読み手としては嬉しい点ですね。アリスや火村の一人語りで終わったり、火村が途中参加だったりする作品もありますが、やはり最初からこのコンビが一緒だと、安心感があります。

この作品は長編なので、つらつらと長く続く感じのかなぁ、とか思っている方もいらっしゃると思われますが、そんなことは無く、作中で捜査が始まると続きが気になって一気に読める作品だそうなので、長編を読むのに抵抗がある人にもおすすめです。

まとめ 

有栖川有栖作品の最新作、『インド倶楽部の謎』のあらすじ、ネタバレと感想について書いてきました。ここでそれらをまとめましょう。

①『インド倶楽部の謎』は、27年続く「作家アリスシリーズ」の最新作で、アリスの1人語りで展開される作品が多い。

②『インド倶楽部の謎』は、「前世」というキーワードで集まった7人の例会から殺人事件が始まり、アリスと火村の2人が捜査に乗り出すストーリー。

③本格ミステリーでは珍しい、「動機」が事件の謎を解くカギであり、インド倶楽部の7人は共同幻想で結ばれていた。

④何処かしっくりこない、余韻の残る作風が、有栖川作品らしさを醸し出している。

本作は「前世」という、非現実めいたキーワードが軸になっています。このようなキーワードと対象に、火村とアリスの2人は、どこまでも現実めいた発想で犯人を追い詰めていきます。

そのような2人のコミカルな掛け合いに、非現実で荒唐無稽な出来事に翻弄されている読者も、ホッと一息つけることでしょう。

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